「日本最大の砂丘って鳥取じゃないの?」そう思ったあなた、実は間違ってます。本記事では面積ベースで見た「本当の日本一の砂丘」をランキング形式で紹介。
一般には知られていない1位の正体や「鳥取砂丘は最強」と思われている理由もあわせて掘り下げました。さらに砂丘と砂漠の違い、観光地になっていない意外な砂丘の存在も紹介します。
「砂丘の鳥取」という常識がひっくり返る5分間、はじまります。
日本の大きな砂丘ランキングTOP3
1位 猿ヶ森砂丘(青森県)

日本最大の砂丘と聞いて、鳥取砂丘を思い浮かべた人も多いはず。
でも実は、日本で一番広い砂丘は青森県にある「猿ヶ森砂丘」です。その面積はなんと約1万7000ヘクタール。鳥取砂丘の30倍以上のスケールを誇ります。
では、なぜこれだけ大きな砂丘がほとんど知られていないのでしょうか?
その理由はこのエリアが防衛省の管理下にあり、自衛隊の演習場として使われているから。一般人は立ち入ることができず観光地化もされていないため、地図で見ても名前すら知らない人が大半です。
ただし地形としては太平洋からの風で砂が運ばれて形成された正真正銘の風成地形。まさに「幻の砂丘」と呼ぶにふさわしい存在です。
2位 鳥取砂丘(鳥取県)

日本で最も有名な砂丘といえば、やはり「鳥取砂丘」です。
面積は約545ヘクタールと猿ヶ森には及ばないものの観光地として整備されており、風紋や砂簾などの美しい地形を間近で体感できるのが大きな魅力です。
鳥取県が誇るシンボル的存在で、国内外から多くの観光客が訪れる一大観光地でもあります。このため「日本一の砂丘は鳥取砂丘」と思われがちですが、実際の面積では全国2位となります。
とはいえその知名度やアクセス性、さらには学術的な価値も含めて多くの人にとって「砂丘の原風景」といえばここ。
「大きさ」ではなく「体験できる砂丘」としては、まぎれもなくトップクラスの存在です。
3位 中田島砂丘(静岡県)

静岡県浜松市に広がる「中田島砂丘」は、日本で3番目に広い砂丘として知られています。
面積は約430ヘクタール。太平洋からの強い季節風によって長年かけて形成されたこの砂丘は、風成地形の典型例としても注目されています。
観光地としても整備されており、春にはウミガメの産卵地としても有名。地元の人々にも親しまれ、イベントや撮影スポットとしても活用されています。
一方で年々進行している「砂の流出」や「植生の拡大」によって、砂丘の景観が変わりつつあるのも事実です。
対策として人工的な砂の投入や風を通す工夫が続けられており、自然と人の関わりが深く反映された砂丘でもあります。
砂丘と砂漠の違いは大きさじゃない?
砂丘は地形 砂漠は気候で決まる


砂丘と砂漠の違いって、大きさの差じゃないの? ─ そう思っている人は意外と多いかもしれません。実際には、砂丘は「地形」、砂漠は「気候」という、まったく異なる分類軸に属しています。
砂丘とは風によって運ばれた砂が堆積してできた丘のような地形のこと。海岸や湖の近くでも形成されるため、湿潤な地域でも存在します。
一方で砂漠は年間の降水量が極端に少なく、乾燥状態が続く気候帯を指します。
つまり砂丘があっても気候が湿っていれば砂漠とは言いませんし、砂がまったくない「岩の砂漠」も存在するのです。
砂丘と砂漠は見た目が似ていても定義としてはまったくの別物。ここを理解すると、地形の面白さが一気に深まります。
砂漠には砂丘があるが逆は違う



サハラ砂漠などの写真を見ると、一面に広がる波打つ砂丘の景色が印象的です。
確かに砂漠の中には砂丘が含まれていることが多く、そうした景観が「砂漠は砂丘の集合体」という誤解を生む要因にもなっています。
しかし実際には、砂漠のすべてが砂丘ではありません。むしろ岩場や礫(れき)ばかりの地形も多く、サハラ砂漠ですら砂丘の割合は全体の2割以下とも言われています。
逆に湿潤気候の中にも砂丘は存在します。つまり「砂漠には砂丘がある」は正しいかもしれないけれど、「砂丘がある場所が砂漠」というわけではないということです。
この前提がずれていると、鳥取砂丘を「日本の砂漠」と誤解してしまうわけですね。
鳥取砂丘が鳥取砂漠にならない理由

「鳥取砂丘がもっと広がったら、日本にも砂漠ができるの?」─ 実はこの感覚、多くの日本人がなんとなく抱いています。でもこれは本質的に間違いです。
鳥取砂丘は確かに広大で砂丘としての風景は「砂漠っぽさ」すら感じさせますが、日本の気候条件では砂漠にはなりません。なぜなら鳥取は湿潤な日本海側気候にあり、年間を通じて雨や雪が降ります。
砂漠とはあくまで「降水量が極端に少ない乾燥地帯」のこと。
砂の量や広さではなく「気候」が決定要因なのです。つまり鳥取砂丘がどれだけ広がっても、日本の気候が変わらない限り鳥取砂漠にはなりません。
この誤解をほどくだけで、地形と気候の関係が一気にクリアになります。
日本各地の意外な砂丘たち
九十九里浜も実は「砂丘帯」だった

九十九里浜といえば「長い砂浜」というイメージが強いですが、実はこの一帯は「砂丘帯」と呼ばれる地形です。
太平洋側から吹きつける風が海岸の砂を内陸へと運び、長い年月をかけて低く緩やかな丘を形成しています。
鳥取砂丘のような起伏の大きな景観ではありませんが、地質学的にはれっきとした砂丘の一種です。ただし九十九里では松林や農地が広がっているため、多くの人はそれが砂丘であるとは気づきません。
観光地としての「見た目」に砂丘っぽさがないだけで、地形の成り立ちを見れば実は立派な風成地形。私たちの身近な場所にも、知られざる砂丘は存在しています。
観光地じゃない砂丘も全国にある



砂丘と聞くと、多くの人は観光地として整備された鳥取砂丘のような場所を思い浮かべます。しかし実際には、日本各地に「観光地化されていない砂丘」が点在しています。
たとえば鹿児島県の「吹上浜」や静岡県の「浜岡砂丘」などは地元では知られていても、全国的にはほとんど知られていません。
これらの場所も海岸からの風によって形成された典型的な風成地形で、地質学的な定義ではしっかりと砂丘に分類されます。
観光地でないぶん整備もされておらず、場合によっては立ち入り禁止区域になっていたり地元の生活圏に溶け込んでいたりします。つまり「日本の砂丘は観光地」という先入観は、見事に外れるわけです。
砂丘が失われつつある現状とは

日本の砂丘は、自然の力だけでなく人間の活動によっても少しずつ姿を変えています。かつて広がっていた砂丘地帯が、今では草木に覆われて「砂じゃない場所」になっていることも少なくありません。
これは風を遮る建物や植林によって、砂が移動できなくなった結果です。さらに防砂林の整備や護岸工事が進むことで、海岸から新しい砂が供給されにくくなっている地域もあります。
自然保護と生活環境のバランスを取る中で、砂丘本来の動的な姿は見えにくくなりつつあるのが現状です。
身近にあるはずの砂丘が気づかないうちに消えていく ─ そんな現象が、今この瞬間にも静かに進んでいます。
まとめ

砂丘と聞くと「鳥取砂丘」一択だった人も、この記事を通してそのイメージが少し変わったかもしれません。実は日本には観光地ではないけれど、確かに存在している砂丘がいくつもあります。
そして「砂丘」と「砂漠」がまったく違うものだということも、改めて整理できたはずです。
面積では日本一なのに一般には知られていない猿ヶ森砂丘や、地元に溶け込んで誰も気づかない九十九里浜の砂丘帯など、知れば知るほど砂丘の世界には奥行きがあります。
「ただの砂の山」だと思っていた風景に、実は地形のドラマが隠れていた ─ そんな気づきをきっかけに、次に砂地を歩くとき、ちょっとだけ見え方が変わっていたら嬉しいです。
編集後記

私が中田島砂丘という場所を知ったのは、母から聞かされた昔話がきっかけでした。私の母は静岡出身で、50年ほど前に父と一緒に中田島砂丘へ行ったことがあるそうです。
そのときは海岸線がまったく見えないほど一面に砂が広がっていて、真夏の炎天下にサンダルで歩こうとしたものの、暑さに耐えきれず途中で引き返した─。
そんな話を、子どもの頃に聞かされていました。
それからしばらくして、大人になった私は実際にその中田島砂丘を訪れることになります。
母の話を思い出しながら現地に立ったとき、まず感じたのは「……あれ?ただの砂浜じゃん?」という拍子抜けでした。
私の目の前にあったのは確かに砂丘ではあるものの、想像していたような「圧倒的な砂の丘」とはだいぶ違っていて、正直なところ少しがっかりしたのを覚えています。
でもその違いこそが、時間の経過とともに地形が変わっていくという事実をリアルに感じさせてくれました。風や波に削られ、かつての砂丘の姿は少しずつ失われていったのだろうと思います。
今回紹介した猿ヶ森砂丘は、誰も立ち入ることができない「見えない日本一」。一方で中田島砂丘は「誰でも行けるけど、かつてとは違う姿」。(本当に困ってるのはウミガメさんなんですけどね)
砂丘というのはただの景色ではなく、変化や記憶ごと飲み込んで存在している。私はそう感じています。
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