鎌ヶ谷市はなぜ渋滞がひどいのか:地形と街が抱える「詰まりやすい」流れ

鎌ヶ谷市はなぜ渋滞がひどいのか:地形と街が抱えた「詰まりやすい」流れ 沼NEWS

鎌ヶ谷って、なんでこんなに渋滞がひどいの?そう感じたことがある人へ。日常の通勤や買い物で毎日のように渋滞する道、いつまで経っても抜けられない交差点。

そのイライラの原因は何なのか、この記事では「地形」「道路構造」「街の成り立ち」といった視点から丁寧にひも解いていきます。

交通量の多さだけではなく、鎌ヶ谷という場所の立地や幹線道路のクセ、街ができた経緯など。

見過ごされがちな要素にも目を向けることで、鎌ヶ谷が「詰まりやすい街」になった理由がきっと見えてきます。読んだあと、渋滞の理由がスッと腑に落ちるはずです。

 

立地と道路のつくりから見る鎌ヶ谷の渋滞

鎌ヶ谷は周辺都市の通り道になりやすい

鎌ヶ谷は周辺都市の通り道になりやすい

鎌ヶ谷市は、松戸市(人口約50万人)・柏市(43万人)・船橋市(約65万人)・白井市(約6万人)といった大都市に囲まれた、ちょうど中間点にあたります。(ちなみに人口は約11万人)

しかも成田と東京を結ぶ動線の中間にも位置しているため、目的地でなくても通過する車が自然と集まってくる立地です。

こういった「通過点」としてのポジションにもかかわらず、東西を貫くルートが限られているため、広域移動の交通が一部の交差点に集中しやすいという問題が発生します。

とくに初富交差点は構造的に東西の抜け道として機能しにくいため、多くの車がやむなく鎌ヶ谷大仏交差点の方へ流れて行く。

こうして「鎌ヶ谷に用事がない車」が、生活道路や市街地の中心部を日常的に通過してしまうことが、渋滞の大きな要因となっています。

南北と東西を貫く道が実質2本しかない

南北と東西を貫く道が実質2本しかない

鎌ヶ谷市を南北に貫くのは県道8号線、東西に伸びるのは国道464号線です。つまり市を跨いで移動する際の幹線道路は、実質この2本しかありません。

なのに国道464号線は「くぬぎ山交差点」で一度南下し、再度「初富交差点」で北上、「鎌ヶ谷消防署前交差点」で東に折れ曲がるといったように、一直線に通り抜けられる状態にはなっていません。

さらに「初富交差点」では成田方面から松戸方面へ向かう車の右折が禁止されているため、多くの車がUターンや大回りを強いられます。

つまり、国道なのに双方向の全区間走破ができないという「致命的な構造不良」を抱えているわけです。(参考サイト)

そのため、成田方面からの車が「鎌ヶ谷大仏交差点」へ集中し、初富と鎌ヶ谷大仏、鎌ヶ谷の2大渋滞スポットを形成してしまうわけです。

幹線道路がきれいに交差せず重複している

幹線道路がきれいに交差せず重複している

その国道464号線ですが、一部の区間が県道8号線と重複しています。つまり、主要な幹線道路が2本しかないのに、その2本が一緒になっている場所があるということ。

これでは、交通が逼迫するのは当然です。さらに、「多くの車がUターンや大回りを強いられる」場所も専用レーンはなく、しかも商業施設の目の前なので「カオスな状態」を作りがち。

地元の車が「この無謀なUターン」に挑むことは少ないかもしれませんが、カーナビを頼りに迷い込んだドライバーがいるだけでも、体感的には渋滞の原因になってしまう。

生活道路に迂回する車も多く、通過交通が生活道路に入り込んで「怖い」という不安もある。(鎌ヶ谷市サイト)

幹線道路の混雑、生活道路の交通、駅周辺の雑踏が物理的に分離されていないことが、鎌ヶ谷の渋滞をより複雑にしています。

 

街ができた順番と「地形的に抱える制約」

線路が先で通って街と道路が後からできた

線路が先で通って街と道路が後からできた

鎌ヶ谷市の街づくりを考えるうえで見逃せないのが、カーブが多いことで有名な「京成松戸線」です。

この路線は鎌ヶ谷市に住宅が広がるよりずっと前、陸軍鉄道連隊が「線路敷設の練習用」に建設したとされており、とにかくグニャグニャ距離稼ぎ(いっぱい練習した)したそうです。

戦後、この線路が「京成松戸線」となりましたが、街づくりや道路計画は「このグニャ」を避ける形で進める必要があったので、道路整備も簡単ではなかったと考えられます。

最近では「京成松戸線」も高架化が進み、グニャ線路に関する課題は減少傾向にあるようですが、街や道路の形を変えるには、長い時間と大きなお金が必要です。

そのため、道路の見直しは「まだ道半ば」といった状態。鉄道と街と道路の順番が逆だったことが、鎌ヶ谷の交通に影響を与えています。

鎌ヶ谷は多くの車が通り抜ける「山の頂上」

鎌ヶ谷は多くの車が通り抜ける「山の頂上」

さて、実は鎌ヶ谷は「地形的にも」交通が集中しやすい特徴を持っています。

「鎌ヶ谷」だけに「谷っぽいイメージ」がありますが…、市の中心部(初富付近)は周辺よりも標高が高く、手賀沼・印旛沼・東京湾の三方向に水が分かれていく分水嶺

つまりここは「山の頂上」のような場所で、周囲の街から一度この高い場所に上って、また別方向へ下っていくイメージになります。

道路も同じように、この地点に向かって四方から集まり、そこから放射状に分岐する構造になるわけです。結果として鎌ヶ谷は「目的地」ではなく、通過交通が集まりやすいポジションになる。

全ての道が山の頂上に向かうのは自然なことです。でもこの山、すんなり通過するには、あまりにも人口が多すぎる。ある意味、「日本で一番交通量が多い山」だったりするのかもしれません。

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